最近のちょくちょく耳にするようになった「ポストモダン」。
今回はモダン・デザインからの脱却を目指して生まれた芸術運動、
『ポスト・モダン』についてまとめていきたいと思います。
そもそもモダン・デザインとは
モダン・デザインの出発点となるのが、
19世紀末のヨーロッパで起こった産業革命による技術の発展です。
大量生産と大量消費を背景に生まれたのが『アーツ・アンド・クラフツ運動』です。
イギリスのデザイナーであるウィリアム・モリスが主導したこの運動は、
中世の職人による手仕事を重視し生活と製品の統一を目指しました。
国境を越えてヨーロッパ各国に考えが波及していきます。
『アーツ・アンド・クラフツ運動』の考えに触れたヴァルター・グロピウスが、
ドイツで教育機関『バウハウス』を立ち上げます。
デザイナーズ家具や建築に興味がある方なら、
一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
その教えは、非装飾的で合理的な形態の追求が基本理念で、
モダン・デザインの基礎となるものでした。
バウハウスの歴史は14年と短いものでしたが、
モダン・デザインは『モダニズム思想』として受け継がれていきます。
同じ頃、ヨーロッパとアメリカを中心に起こった芸術運動が『アール・デコ』です。
モダン・デザインをはじめとする同時期に起きていた芸術運動を、
貪欲に取り入れたアール・デコは、ジャンルも様式も多様で、広く流行します。
ポスト・モダン
ポスト・モダンはどのように始まったのかを見ていきましょう。
建築から始まった、モダン・デザインへの反抗と
脱却を目指したポスト・モダンの起こりは、やはり建築にありました。
モダン・デザインを基本理念とするモダニズム建築は、
装飾を排した合理的・機能的なシンプルデザインを特徴としています。
簡素で質の高い建築は流行しましたが、
それにより都市や住宅の景観が味気なくなったという批判もあったようです。
チャールズ・ジェンクスが1960年以降の建築を批判する文脈で、
ポスト・モダンという言葉を使い、広く認知されました。
装飾的で象徴的な造形、古代ギリシアなどの古典的意匠の引用などが、
ポスト・モダン建築の特徴として挙げられます。
プロダクトデザインとポストモダン
ポスト・モダンの理念は建築からすぐさまインテリアに取り入れられ、
プロダクトデザインへ流入されます。
その皮切り的存在であったのがイタリアのデザイン集団である
『アルキミア』と『メンフィス』によるデザイン製品でした。
大企業の機能的な製品に反抗したデザインを作り出すことを目標に、
活動を始めました。
使用者と製品を感情的、感性的な新しい感覚で結ぶことを目指しましたが、
利便性、生産性といった実用部分をあまり重視していなかったのか、
製品としての役割をあまり果たすことができない物も少なくありません。
もう一方の「メンフィス」はアルキミアを離脱し、
離脱したメンバーで再結成された組織です。
アルキミアのアプローチがあまりに消極的であったことに、
不満を抱えた結果とされています。
そのためメンフィスでは、実際に生産され、
使用されることまでを考えた製品をデザインしようと試みがされています。
グラフィックデザインとモダニズム
1980年代、ポスト・モダンの時代は建築やプロダクトデザインといった立体物だけでなく、
グラフィックデザインにも大きな変革をもたらした時代でもありました。
その背景はモダン・デザインが起こった時代と同じように、
技術の発展と情報の変容という要素がありました。
バウハウスからスタートしたモダン・デザインと、
グラフィックデザインの結びつきは、
ペーター・ベーレンスの活躍がかなりの割合を占めます。
ドイツの建築家・デザイナーであるペーター・ベーレンスは、
ドイツのモダニズム運動『ユーゲントシュティール』を通して、
グラフィックの図面を縦横の罫線で分割するグリッド・システムを用いており、
家具や食器の全てに統一されたデザインを施す、
トータル・デザインの提唱などの功績を残しました。
ベーレンスの書体は、タイポグラフィの権威の怒りを買いつつも、
どの印刷媒体でも広く使われ大成功を収めました。
まとめ
今回はポスト・モダンの始まりと、
変遷をプロダクトデザインとグラフィックデザインという立体と、
平面の技法を取り上げて見ていきました。
モダン・デザインと同じように、国もジャンルも幅広く、
同時期に興った他の芸術運動から影響を受けたり、逆に影響を与えたり。
新たな物を生み出すインスピレーションには、
視野を広げてアイデアを組み合わせる事が大切なのでしょうか。
今考えれば学校で教えられていた授業も無駄ではないのかも。
家具の分野でも色々な視点から提案ができればいいなと思います。
家具についてのご要望等ありましたら、お気軽にご相談ください。
心よりお待ちしております。
それでは。
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